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転職

2015.03.05 ( Thu )

中途採用看護師の教育を個別に適えるための計画


中途採用者には、どうなってもらいたいのか?

中途採用看護師の活用の鍵を握るのは、やはり教育体制であることは間違いありません。

キャリアアップを目ざした職場の異動からバーンアウトに近い転職まで、さまざまな理由で新しい環境を選んだ中途採用看護師たちの大きな関心は、その施設で自分がどのような教育のチャンスを得られるのか、そしてそれがどのような学びを得るのかということでしよう。

それがよくわかるからこそ、多くの看護管理者や教育担当者は、中途採用看護師の教育をどうすべきかに頭を悩ませるのです。

クリニカルラダーや経験年数別教育システムを活用している施設からは、中途採用看護師が自分たちの施設ではどのレべルにあると判断して教育を行えばよいのか悩んでいるとの声がよせられます。

なぜ悩むのか?それは中途採用看護師の経験や能力はさまざまであり、ある能力は段階1でも、また別の能力は段階10といったように「この人は段階〇である」「この人は何年目に相当する」と査定しにくいからです。

このように考えると、その人にあった教育をつくる以外にありません。個別のオーダーメイド教育をする余裕などないと思われるかもしれません。しかし、受け入れ側が用意できる教育プログラムを提示し、そのなかから中途採用看護師と共に選定し、不足部分はほかで補えるようサポートする,のように無理なく組み合わせることが可能です。

これこそが、中途採用看護師教育をデザインするという呼び方になります。

ここからは、何をポイントに教育のデザインを行えばよいかを解説していきます。

教育のデザインに必要な要素

中途採用看護師教育のデザインを考えるときには、何を教えるかという教育内容に着目しがちです。
しかし、本当に内容だけをみていてよいのでしょうか。

教育デザインを作成するうえで必要な要素は、次に示すとおり「6W2H」で考えると全体が把握できます。
つまり、教育デザインとは「旅のしおり」のようなものと考えてみてください。それをみれば、教育を受ける中途採用看護師も看護管理者も教育担当者も、なぜ、いつ、どこで、何をするのかが具体的にイメージでき、行動に起こせるもの、これこそが教育デザインです。

これによって、中途採用看護師の教育を取り巻く関係者全員が同じ方向を向いて取り組むことが可能になるのです。

教育デザインの構成要素6W2H

1.Why 何のために? (目的)
2.Who だれが? (教育担当者・看護管理者・受け入れ側の看護師など)
3.What 何を? (目標)
4.Whom いつ? (期間・時間)
5.Where どこで? (場所)
6.How どのように? (手段)
7.How much いくら? (予算)

中途採用看護師にどうなってもらいたいのか

改めて、なぜ中途採用看護師に対して教育を行う必要があるのでしょうか。教育をデザインする際には「地域や施設の特性からこのような能力をもった看護師が必要である。だから教育を行うのだ」という明確な教育の目的をもつことが大切です。

教育の内容を考えるときに、現在受け入れ側の看護師たちが行っている業務から「これが大事」「あれも大事」と目につくものをとりあえず出していくことがあります。しかし、それでは受け入れ部署として何を求めているのかがみえてきません。

また「科学的根拠に基づいた質の高い看護を提供する」といった抽象的な目標では、何をどうすれば質の高い看護になるのかがまったくわかりません。

したがって、どのような看護師をこの部署では期待しているのかについて、具体的に文章で示す、もしくは看護管理者が言葉でわかりやすく説明する必要があります。これがなければ、教育内容は見いだされません。

教育内容を選定するにあたって注意したいことがあります。「実習指導者の研修を受けたことがないのであれば、とりあえずこれを受けてください」のように、この先実習指導者になる予定もないままに「とりあえず」何かの研修を受けてもらうという状況はよくみられます。このような行きあたりばったりの教育プランでは、せっかくの人材がいかされません。

また「とりあえず」の研修受講では、中途採用看護師にやる気を期待するほうが間違っています。また受け入れ部署は「まずは”慣れて”もらう」ことを最優先と考え、中途採用看護師自身も「早く慣れたい」とロにすることがごく普通のことのようですが、この「慣れる」という言葉には注意が必要です。

それぞれが別々に「慣れる」ことをイメージして、一方は「気持ちに余裕が出てくること」であり、他方は「スムーズな業務の遂行ができること」であるといった大きなずれが起こっては、さまざまな問題が生じるのは目にみえています。

部署のあるべき看護の姿を描く

このように考えると、期待する看護師像はあまり壮大すぎても受け入れ側の看護師たちには伝わりにくいことがわかります。まずは現状をながめる。そして、自分たちが行っている看護を見直してみる。そこで、何を大事に看護実践しているかを見いだしていけば、この部署に必要な看護=中途採用看護師がここで学ぶべき内容がみえてくるのではないでしょうか。

大切な看護実践である現状

たとえば、
「私の部署は内科外科混合であるため、疾患は多岐にあたります。施設の方針としては、医療安全確保と患者の尊厳を尊重することを重視しています。この地域は農村地帯で、退院しても農作業に出ざるをえない、もしくは家族が自宅介護を行うことが難しいため、再入院が多くなっています。私たちはこれらの状況から、入院時から退院後の生活を見すえた看護に力を入れているつもりです。

という部署の現状をとらえます。

そこから、

  1. 入院時から退院後の生活構築を見すえた看護を提供する。
  2. 患者と家族の生活状況を把握するためにていねいに話を聴く。
  3. 退院後の生活フォローのために、地域の社会資源を効果的に活用する。

現時点ではこの3点が、私たちの大切な看護実践である、と決断します。その後この3点ができるようになるためには、どのような学習をすればよいのかを考えていくことになります。

私たちは「あれも大事」「これも大事」とたくさんのことを抱えてしまいがちです。そのうえ本当に大事なことを絞り込み、それでよいと決断することが苦手です。

そのため結論が出ずに、結局現状のままとなることが往々にしてみられます。「病棟の看護師全員で検討して、大多数が納得したのだから、今はこれでよし。その後、不具合があれば修正する」と決断することも必要なのです。

受け入れ部署でどんな看護師になってもらいたいのか、どのような看護実践をしてもらいたいかを中途採用看護師に説明せずに、自分たちのやり方をただ押しつけるのは98%以上間違いです。

あれもこれも大事からこれだけは必要へ!

目ざすものをすりあせた目標設定

教育デザインを行うことは、さまざまなプロセスを含んでいます。何をいつまでに教育するのかを中途採用看護師と共に決定する場を設けましょう。教育をデザインする必要性や、それを今後どのような方法で進めていくかをお互いに共通理解しておくことがとても重要です。

まず看護管理者が自分の言葉で「私の部署では○○のような看護の力で、患者や家族に最善のケアを提供したいと考えています。あなたにはこれまでの経験から、どのあたりなら私たちに力を貸してもらえますか。また、どの部分をもっと強化したいと考えますか」と、まずは相手の考えを引き出します。

すぐに答えが出ないようであれば、たとえば「私たちは患者さんの生活状況を把握するためにこのシートを使って聞き取りをしています。まず、あなたにも、これを使って看護計画を立ててもらいましょう。

今月中に5つのケースで看護計画を立てるという目標にしませんか。5ケースとったところで、聞き取り方やシートに記入の仕方、どのように看護計画に退院後の生活を考えて立案するかについて一緒に考えましょう」と提案することも大切です。

「退院後の生活を見すえて看護計画が立案できる」という目標設定でもかまいません。しかし、この目標では具体的にどのような力が必要なのか、共通理解は難しいことが理解できると思います。

さて,先の例では、

  1. 患者の生活状況の聞き取りから、この地域の特性を考えた生活状況を把握することができる。
  2. 聞き取りの際のコミュニケーションが円滑に行える。
  3. シートをもれなく記載することができる。
  4. シートに記載した内容を看護計画に反映することができる。
  5. 1か月以内に5つのケースで聞き取りを行い、自身の課題とシート活用に関する問題点をあげることができる。

など、何をどこまでやってもらいたいのかを目標という形で明確にします。また、どの順序で行えば中途採用看護師の負担が少なくてすむのかを、看護管理者や教育担当者と中途採用看護師の2者間で検討し決定します。それを文書に残すことができれば、安心して看護が行え、かつ看護管理者や教育担当者もどこまでできたのか評価しやすいことはいうまでもありません。

看護の現状を客観的に指摘してくれる

「うちではこのシートを使って退院後の生活を考えた看護計画を立案しているのでやってください」と、中途採用看護師のこれまでの経験をいかすことなく、自分たちのやり方を押しつける教育方法もあるでしよう。しかし、このような方法では、本当にそのシートで問題はないのか、退院後の生活を考える看護計画は患者家族の生活にそったものか、など自施設の看護を客観的にみてくれる貴重な人材を失うことにもなります。

これまでの経験を尊重してくれる組織に悪い印象を抱く中途採用看護師は、ほとんどいません。目標を設定するときには「中途採用看護師は○○ができる」だけでなく「この方法が効果的か効率的かを判断する課題を見いだす」などの業務見直しの視点も含めておくと、部署活性化の道が広がります。

施設側の要望を伝えて実現可能な目標設定へ

なんでもすべて中途採用看護師の要望を聞くのが教育デザインではありません。「私はすべてに自信がないので、1年かけてゆっくり教えてもらいたいのです」という中途採用看護師に対して、それが施設や部署として難しいのであれば「こちらも人手があれば、ゆっくりと関わりたいのです。

しかし、その余裕もないのが事実です。まず、最初の3か月でここまで実践ができることを希望しますがいかがでしょうか」のように、部署側の要望もきちんと伝えることがポイントです。そして、部署側がサポートできることを伝え、両者で実現可能な目標を設定することが最も効率的です。

中途採用看護師を伸ばすためのプログラム評価

「上司から”評価は?”と問われますが、どうやって評価したらいいのかわかりません」「評価があいまいで、自分たちの方法が適切なのかどうか不安です」「たくさんの研修会に参加して勉強してきましたが”評価”の方法がわかりません」という教育担当者の声を多く聞きます。

「実施した教育の評価は、チェックリストにすべて○が付くことです」と決めてしまえば、どんなに楽かと思います。しかし、それが本当に教育の評価なのでしょうか。

中途採用看護師の採用と教育の基本的な手順」で述べたように、行動が変化したら教育の効果があったと評価した時代もありました。しかし、めまぐるしく変化する医療・看護の社会状況に対応せざるをえない部署や施設においては「評価とは、現状をよくすることが目的であり、評価は手段である。つまり結果の評価よりもプロセスの評価が大切である」という考えがより自然であると考えます。

まとめ

評価に多くのエネルギーを注いだところで、現状をどう変えたいかが明確でないと、現状はそれほど変わらないということです。それならば私の部署には、このような能力をもつた看護師が必要だ」「この能力をもつ看護師を育成するために、私たちはこの教育やこの研修会を企画している」といった、達成したいビジョンや目標の設定にこそ力を注ぎ、すべての看護師に理解できるような形に変えていくことが必要なのです。

看護管理者や教育担当者はこれまで、研修を受けた直後、もしくは現場でどのくらい知識や技術が活用できたかを問う際に、どれだけ目標に達することができたのかを判断する総括的評価に重きをおいてきました。しかし、評価とは本来、今現在どれだけ目標を達成できたか、目標に対する「現在地点の確認」であると考えます。このように考えると、教育や学習の途中に行われる形成的評価にもっと注目すべきことがわかります。

形成的評価とは「一連の学習や経験を通して、対象者がどのくらい進歩したかを非公式な方法で確認する」ことであり「通常は個人を対象に行われ、最終的な採点や総合評価の材料にならない」とされています。

つまり、看護管理者や教育担当者が設定した目標を達成するために、教育活動の途中で行う評価であり、しっかり学べていない技術が身につかないことを学習者である中途採用看護師の責任だと、一方的に押しつけることはしてはいけないということです。むしろ、その結果を真摯にとらえて教育プログラムや方法を変えていくことが重要なのです。

このように考えると対象者である看護師に対して、教育の途中で「到達していただきたい目標はこのように設定されていますが、現在どこまで進んでいると思いますか。目標到達のために、私はどんなサポートができますか」といった支援やフォローに重きをおくことが大切なのです。

以上のことから、看護管理者や教育担当者が評価者として中途採用看護師を評価するだけでなく、自己評価と他者評価をあわせて、現時点の確認を行う意味がみえてきます。その後、たとえば、ある技術を獲得するという目標達成に向けて、その技術を使ったケアが必要な患者さんを優先的に中途採用看護師に受けもってもらうといったやり方がみえてきます。

評価と目標はワンセット。目標がなけれぱ評価はできない。評価は個人だけをみずに、教育デザイン全体を評価する。評価は中途採用看護師が目標達成するために、どんな支援。フォローができるかが最も重要である。

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