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2016.05.31 ( Tue )

給料に換算できない部分が多い看護師の給料の現実を公開


「給料が安い」― 多くの看護師がよく口にすると思いますが、実際のところ看護師の給料は安いのでしょうか。看護師の年収は400万円前後~500万円の方が多いようですが、他の職業と比較して安いのか高いのか?気になるところですね。女性の平均年収や、看護師という職種の背景にあるもの知ることで、看護師の仕事を選ぶときの判断材料としてください。

看護師の給料は専門性と責任に見合っていないと考える看護師が多い。女性の給料は経験があがっても上がりにくい傾向にある。

20代女性の平均年収・職種別ベスト10

大手求人情報誌DODA(デューダ)によれば、20代女性の平均年収は322万円、30代では385万円となっています。業種別ベスト10では技術系の職種が高年収で、1位はIT/通信系技術職の419万円、10位は販売/サービス業の290万円となっています。細かい職種の分類では投資銀行の653万円が第1位、100位には258万円で美容師/エステティシャンがランクインしています。

女性の平均年収ランキングトップ10。技術系の職種は男性より上。

職種を小分類ごとに分けた場合もトップ10に技術系職種が5つランクイン。

出典: 働く女性の本音 DODA

 

看護師の年収は安すぎる?

さて、看護師のみなさんは、他の職種と自身の年収とを比較してみて、どのようにお感じになるでしょうか。看護師の収入は、金額だけを見れば決して「給料が安い」部類ではない、と言えるのではないでしょうか。しかし、看護師の給料から残業代や夜勤手当を引いたらどうなるでしょう。また、いわゆるサービス残業に相当する分の給与が正当に支払われていたら…そう考えると、看護師の給料は仕事量やその責任に対しては「安すぎる」と言えるのかもしれませんね。

女性の給料は上がらない

日本人全体の給与所得平均は414万円、男性511万円、女性では272万円となっており、女性は25歳~59歳までの年齢層でほとんど変化がありません。また、勤続年数別の平均給与でも女性は男性に比べて差がつきにくく、「女性の給料は上がらない」ことを如実に物語っています。

年齢階層別の平均給与は、女性では年齢による格差はあまり顕著では無い。

勤続年数別の平均給与は勤続30~34年の階層が男女ともに最も高い。女性では勤続年数による格差は顕著ではない。

出典: 国税庁 平成25年民間給与実態統計調査  22、23ページ

 

看護師の給料は上がりにくい環境

かつての呼び名である「看護婦」「看護士」から「看護師」に統一されたのが2002年、これを機に男性看護師も増えたとはいえ、現在でも女性看護師100万人に対して男性はわずか7万人程度で、給料の差もほとんどありません。相変わらず看護師は女性の世界であり、その点では他の職種と同様、給料があがりにくい環境にあるといえるでしょう。

責任の重さに見合っているか

社会に出たスタート時点から、そこそこ高い給料がもらえて安定しているけれど、勤続年数や仕事上の責任に応じた昇給はあまり望めないのが看護師の給与だといえるかもしれません。だから、看護師としての経験を積めば積むほど「給料が安い」と愚痴をこぼしたくなるのではないでしょうか。

給与水準は看護師の仕事の専門性と責任の重さに見合っていないと考える看護師が多い。

出典: 日本看護協会「日本の医療を救え」より

 

経済の停滞がもたらしたもの

バブルが崩壊して日本の社会経済全体が停滞してしまって以降、多少の景気浮揚はありましたが、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災と、度重なる打撃により未だ日本経済は低迷しています。また、ものづくりの現場はほとんどが人件費の安い海外へと流出してしまい、日本の国内では雇用を守ることも困難な時期が続きました。

ブラック企業とワーキングプア

こうした経済環境の悪化がもたらしたのが「ブラック企業」と「ワーキングプア」です。ちょうどバブル期の終わりごろ社会に出た世代は、「団塊ジュニア」と呼ばれる人口の多い世代でした。バブルの崩壊で日本経済は深刻なダメージを受けて新規雇用は激減、多くの団塊ジュニアが就職できずにフリーター化してしまい、後には「ロストジェネレーション」と呼ばれることになります。

ロストジェネレーションと非正規雇用者

このとき大量に生まれた非正規雇用者は、非常に劣悪な雇用条件で働かなければならない羽目になり、雇用主側にも非正規雇用者に違法な過重労働を課す「ブラック企業」が目立ち始めました。また、「ブラック」とまではいかなくても、「必要な時に必要なだけ」雇い入れが可能な派遣やパート・アルバイトを利用する企業が増え、いわゆる派遣切りが社会問題化しました。

経済の悪化による貧困化とワーキングプア

経済の悪化によってかつての日本型雇用(年功序列や終身雇用、労働組合など)は崩壊し、雇用の保証や、企業側が社会保険の費用負担をしなくてもよい臨時雇用、非正規雇用が雇用主にとって非常に好都合だったからです。派遣社員や非正規雇用者は、低賃金の上にいつ仕事がなくなるかわからない不安定な状態にさらされ、貧困化を招きました。こうしてできあがった貧困世帯は「ワーキングプア」と呼ばれ、憲法に定められた「職業選択の自由」からもっとも遠い位置に存在しています。

 

医療世界のワーキングプア

このワーキング・プアは医療の世界にも無縁ではありません。開業している歯科医の数はコンビニよりも多い、というのは有名な話で、歯科医の5人に一人がワーキングプアだとする統計もありました。また、コンサルタントに乗せられて開業したはいいけれど、赤字になって廃業するクリニックも後を絶ちません。

産科・小児科の激変

さらに、少子化に加えて訴訟リスクの高い産科と小児科は、医師・病院からも敬遠されて診療科そのものが激減しています。歯科医以外にも開業医がワーキングプア化する可能性はゼロとはいえないでしょう。そして、一見するとワーキングプアとは無縁に思える看護師も、決して他人ごとではいられないのです。

女性に多いワーキングプア

総務省の調査によると2015年3月時点で非正規労働者はおよそ2000万人、実に全労働人口全体の約38%を占めています。また、年収200万円未満の労働者はおよそ1800万人、全体の35%がワーキングプア化しているといえます。特に女性の比率が高く、女性労働人口の約4割が年収200万円以下とされています。

年収200万以下の労働者のうち、35%はワーキングプア化しており、女性の約4割は年収200万以下と言われている。

出典: 東京国家公務員・独立行政法人労働組合共闘会

 

看護師の過酷な労働環境

看護師が働く病棟での過酷な労働環境は、経験した人でないと分からないと思いますが、病棟看護師の離職率の高さがそれを物語っています。人手不足の夜勤や当たり前のように日常化しているサービス残業、加えて急性期病棟も慢性期病棟も高齢者ばかりで、看護のほかにも徘徊や事故に備えなければならず、自分の生活や家族のことは二の次三の次…。

急性期医療は危機的な状況にある。看護師の負担は重く、患者の安全も脅かされている。

慢性期医療は急性期医療よりも手薄であるにもかかわらず、医療依存度の高い高齢者が押し寄せ、危機的状況にある。

出典: 日本看護協会 「日本の医療を救え」より(既出)

 

看護師のバーンアウト

さらに医師や先輩からのパワハラ、患者の家族からはクレーム、夜勤やサービス残業など過重労働と相まって肉体的にも精神的にも追い詰められているのが現状です。労働実態調査によると、実に看護師の7割以上が仕事を辞めたいと思っており、メンタル障害の職員がいる職場は全体の3分の1にものぼります。こうした劣悪な労働環境により看護師の約1割がバーンアウトして病院を去っていくのです。看護師の約7割が仕事を辞めたいと思っており、劣悪な労働環境に約1割の看護師がバーンアウトで病院を辞めていく。

出典: 日本医療労働組合連合会 看護職員の労働実態調査「報告書」 64P

潜在看護師のワーキングプア化

いったん医療の現場を離れて潜在看護師になってしまうと、その一部は看護職に復職しますが、多くは看護の現場から離れたままです。そしてこれらの元看護師たちが派遣や非正規雇用者に転じ、ワーキングプア化していくことも少なくありません。

 

離婚率が高い?離職の原因にも

もともと看護師の給与は額面だけをみれば、女性労働者の中では多いほうです。看護師の家庭では夫のほうが収入が低く、妻である看護師の収入に家計を依存しているケースも見られます。深夜勤務を含めた不規則な就業時間も含めて、夫婦間のいさかいやすれ違いが絶えない家庭も多いようです。一般的にみても日本における離婚率は約30%と高く、なかでも看護師は離婚率が高いといわれており、離婚をしてシングルマザーとなることが離職を招く一因でもあるようです。

 

看護師のメンタルヘルス

また、看護師が肉体的な慢性疲労と精神的なストレスによってメンタル障害やうつ病にかかるケースも後を絶ちません。
看護師が肉体的な慢性疲労と精神的なストレスによってメンタル障害やうつ病にかかるケースも後を絶ちません

  看護師は交代勤務という不規則な勤務形態、人間の生死関わる非常に集中力の要する業務を時間内に終わらせなければならないという時間管理が求められ ます。また一方で、献身的な姿勢、冷静な判断を求められるなど心身ともに非常にストレス強度の高い職種です。さまざまなストレスが重なり、精神的不調を来 たした場合、医療エラーにつながる可能性もあます。海外ではストレスコーピング研修や認知療法的アプローチ、Employee Assistance Program(EAP=従業員支援プログラム)など、さまざまな取組みが行われ、医療職メンタルヘルス対策は重要だと考えられています。

  看護師が精神的不調で投薬治療が必要になった場合、交代勤務や薬による眠気で集中力を低下させないよう、患者の多くは服薬時間に非常に気を遣います。そし て次第に服薬が不規則になります。職場上司は服薬が規則的に行われるような勤務スケジュールへの配慮が必要となります。

 また、チームで仕事をするため、医師、同僚看護師に気を遣うあまり不調を隠し、次第に疲弊していく場合もあります。復職に際しては職場上司や医 師、同僚の理解を得て円滑な復職支援の体制づくりも重要になってきます。また、メンタルヘルス不調の早期発見のためには相談窓口の周知徹底も重要です。

 最後にうつ病について付け加えておきます。うつ病の症状の中に「激越」とよばれるほど激しい不安・焦燥感を示す状態があります。このような状態の 場合、不安・焦燥感のつらさのあまり自殺を考えてしまう人もいます。うつ病で自殺の危険がある場合は、まずは一人にしておかないよう、家族の援助が得られ るような環境づくりをしましょう。

出典: 厚生労働省 こころの耳

看護師に多いうつ病やメンタル障害

これは厚生労働省のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」の中にあるうつ病の事例ですが、こうして代表事例に取り上げられるほど、看護師のうつ病やメンタル障害は多いものと思われます。仮にうつ病になっても、家族や周囲からの十分なサポートがあれば職場復帰も可能かもしれませんが、うつ病の原因となったもとの職場に復職するのは難しいでしょうし、他の職場に移ってもうまく周囲になじめず、うつ病の再発を招いてしまうこともあります。

治療と社会復帰

こうしてうつ病が原因で看護師をスピンアウトして、治療を続けながら社会復帰を目指すとなると、派遣社員などの非正規雇用に頼ってしまい、結果としてワーキングプア化してしまう、というケースも存在すると思われます。また、シングルマザーであれば余計に看護師として仕事を続けるのはむずかしくなります。

高い母子家庭の貧困化率

ワーキングプアの増加は若者から中高年にまで及んでいますが、特に母子家庭の貧困化率は高く、ワーキングプアの次世代への連鎖が大きな問題となっています。多くの自治体でこうした「ひとり親家庭の支援」に取り組みが行われていますが、なかでも「子育て王国」を掲げて積極的に取り組んでいるのが鳥取県です。

 

鳥取県の試み-子育て王国

子育て中の看護職員に対する支援も積極的に行われており、鳥取県が開設する「子育て王国」のウェブサイトに紹介されている「社会医療法人 明和会医療福祉センター」は「第2回鳥取県うれしい職場ささえる大賞」を受賞しています。明和会福祉医療センターでは特に看護職員のワークライフバランスに注力しており、それぞれの看護師の状況に応じて勤務のステップが7段階に分けられています。

看護職員のワーク・ライフ・バランス

パートタイムからフルタイム、夜勤まで「自分にとって適切な働き方」が選択できるようになっており、事情があって看護師の職を離れ、就業時間の制約などから働きたくても働けない潜在看護師にも復帰してもらいやすい人事制度が採用されています。そのおかげで、ここ数年は育児を理由とした離職はみられないそうです。

参考: 鳥取県の看護職員を支援するホームページ子育て王国 鳥取県

ひとり親世帯への支援

鳥取県米子市にある鳥取大学医学部附属病院でも、独自にシングルマザー/ファーザーの支援を行っています。こちらでも明和会福祉医療センター同様、夜勤可能な常勤職員、夜勤のないフルタイム契約職員、パート契約職員など複数の雇用条件が用意されています。また、病院内には24時間体制の保育所があり、未就学児童の保育サポートが受けられます。

潜在看護師の復職支援

このほかにも電話で注文できる持ち帰り弁当や、洗たく、掃除、買い物などの家事支援、保証人不要のアパート紹介や住居手当、潜在看護師向けの復職研修や、認定看護師の資格取得支援や外国語教室などのキャリアアップ支援もあります。このようなサポートが受けられれば潜在看護師も復職の道を選びやすくなりますね。ぜひ他県でも同様の取り組みを行ってもらいたいものです。

参考: 鳥取大学医学部附属病院のシングルマザー(ファーザー)支援について

 

まとめ

さて、いかがでしたでしょうか。看護師の給料は金額だけをみれば決して安いとはいえませんが、他の職業と比較したときに、その業務の過酷さ、責任の重さ、精神的なストレスなど、金額に換算できない部分が多いのも事実です。決して収入の問題だけではありませんが、そのために現場を離れて医療の世界に戻らない看護師が大勢いるのも、避けがたい事実でしょう。

看護師として職場を選ぶときは、給料だけでなく、鳥取大学附属病院のように看護師に対する支援を真剣に考え実践している職場を選ぶことが、長く働けることにつながり、結果として生涯賃金の向上につながるのではないでしょうか。

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