2016.04.20 ( Wed )

看護師を辞めたい!新人看護師の不安を軽減する・気にかける


新人看護師に仕事の段取りを教えている師長

医療現場には、毎年、新人看護師が入職してくるが、どのように関われぱスムーズに病棟に適応してもらえるのか、これは永遠の課題のようにも思える。

いつの時代にも「今年の新人は・・・」「今どきの若い人は・・・」といった声が聞かれる。特に、2009年度からは、小学校で受けるストレスを軽滅するために導入された、「ゆとり教育」の世代の新人看護師が出てきた。

この世代の特徴は、「本音を言おうとしない」「失敗することを怖れる」「拒絶されることを怖れる」傾向が強いといわれている。こうした状況の中で、病棟では新人看護師教育に多大なエネルギーを注いでいる。

気にかけてもらえると不安が消えていく

人間関係、それは自分以外の人を気にかけることから始まるのではなかろうか。では、人が他者を気にかけるとはどういうことなのか。気にかけるとは、相手のことを心にとどめて、気遣うこと、心配すること、見守ることであり、存在そのものを認めることに他ならない。

それは、相手に関心がなければできないことである。誰かに自分のことを気にかけてもらえることで人は安心感を覚える。特に、新しい環境に入って、緊張と不安の中にいる時、「自分が自分であって大丈夫」と思えるような自身を肯定できるメッセージを受け取ることは重要である。

新人看護師の潜在なニーズは気にかけてもらうこと

それは、入職直後の新人看護師が最も必要としているニーズであろう。なぜなら、新人看護師にとって、病棟の中で上司や先輩看護師に気にかけてもらえる、ということはことは、看護師として即戦力にならない自分であっても、一人の人間として気にかけてもらえている、見守ってもらえているという安心感につながるからである。

気にかけるあるいは見守ることと監視することの間には大きな違いがある。見守ってもらえていると感じる時の相手のまなざしは温かいが、監視されていると感じる時のまなざしは冷たいものである。

人は、安心感をもつことができる状態であれば自分を信じることができ、ありのままの自分を表現することができる学生から社会人となり、ミスが許されない厳しい医療の現場に、一人で入職してくる新人看護師にとって、そこは孤独な場所である。

新人は自分ができないことで、「上司や先輩に負担をかけたくない」という気持ちや「上司や先輩に嫌われたくない」という気持ちを抱えている。そうした場所に自分の居場所をつくるきっかけとなるのは、一人の人間としての存在そのものを認めてもらえることである。

人は、自分が相手にどのように思われているかわからないと不安になる。緊張と不安でいっぱいの新人にとっては、病棟で「あなたは一人じゃないよ」「あなたに関心をもっているよ」と自分のことを気にかけてくれる看護師としての自立に向けての勇気となる。

それが人と人の信頼を築く第一歩になるのではなかろうか。

看護師として、自分が社会とって、上司や先輩に気にかけてもらえるということは、親や友達に気にかけてもらえる嬉しさとは異なるものであり、職業としてのアイデンティティを形成していく上で重要である。

新人看護師に対してだけでをく、疲れている着導師、妊娠している看護師、落ち込んでいる看護師など、皆が互いに気にかけることができるか否かで、病棟の雰囲気や温かさは大きく変わってくるであろう。

病棟は、看護師が患者をケアするという同じ目標をもって集まる。互いが互いを気にかける風土が醸成されていれば、一人ひとりの看護師が自分の居場所を見つけることができ、看護の心も育まれていくであろう。

言葉をかける・元気を引き出す

誰もが人間関係をうまく築いていきたいと思うのはなぜだろうか。看護師のが仕事を辞めたいと思う原因の上位に「人間関係」があがっている。特に、新人看護師は「失敗を怖れる」ため、自分から「本音を言わない」あるいは本音を言えない傾向がある。

病棟では、新人看護師の思いを聴くことを意図して、新人看護師に意識して声かけをしているところも多い。しかし、新人看護師へのインタビューからは、「先輩看護師は何でも話して」って言ってくれるけど、「本音なんか話せるわけがないんです」という語りもあった。

率直なメッセージを送る

新人看護師は、相手が自分の弱みを含めて自分を受け入れてくれるかどうかを慎重に見極めているように思える。では、どうすれば新人看護師は、自己開示、すなわち心を開いてくれるのだろうか。

人間関係をうまく築くためには、相手に関心をもち、「あなたのことをわかりたい」という率直なメッセージを送ることである。人は、他者からの一言で生きる勇気がわいたり、絶望するものである。

心のこもった温かい言葉は、人の気持ちを温かくさせ、心を開き、相手との距離は近づかせるが、心ない冷たい言葉は、人の気持ちを強張らせ、心を閉ざし、相手との距離は離れさせてしまうであろう。

誰もが望んでいるのは温かい言葉である。そのことはわかっていながらも、人は、仕事が忙しく自分に余裕がないと相手をおもわんばかることができず、傷つけるような言葉をかけてしまうことも少なくない。

勇気をもらって仕事に前向きになった言葉

ここに新人看護師が先輩看護師から受けた対照的な言葉かけを紹介する。まずは、勇気をもらった事例である。新人看護師Aは、先輩看護師Bの言葉で、心が温まる経験をした。


先輩が「患者さんがあなたが身体の向きを変えてくれると楽だったわ、ってお話しされてました。それは看護の基本だし、相手のことを思う気持ちがないとできないことだから、すごいと思うわ。私もそれを聞いて嬉しかったわ」と笑顔で言ってくれました。まだ、何もできない頃でしたから、先輩のその一言で心が温かくなり、頑張る気持ちをもらいました。


先輩看護師Bは、新人看護師Aの体位変換について、患者の反応を伝えただけでなく、笑顔で「すごいと思う」「嬉しい」といった自分の感情を表現している。

この先輩看護師Bの笑顔と言葉には、新人看護師Aに対する承認が含まれており温かさが伝わる。

落ち込ませ、辞めさせたくなる言葉

反対に、新人看護師Cを落ち込ませ、看護師を辞めたいと思わせた、先輩看護師Dの冷たく心ない言葉であった。


先輩から、「今日のあなたの仕事、まだこれだけ残っているわよ。本当に愚図なんだから。あなたが終わらないと私も帰れないんだからね。いい加減早く仕事を覚えて要領よくやってよね。皆が迷惑してるんだから」と言われました。確かに要領よく仕事ができなかったけど、自分なりに段取りを考えながら皆に迷惑をかけないように一生懸命にやっていたので、先輩のその言葉はグサリときて、この病棟では仕事をしていけない、辞めようかと思いました。


先輩看護師Dの言葉は、予定どおりに仕事が進んでいないという現実に対して、新人看護師Cの人格を否定する、「愚図」という言葉や「皆が迷惑している」といった言葉でプレッシャーをかけている。のような冷たい言葉をかけられたら、新人看護師でなくても心は強張り悲しい気持ちになって、やる気も失せてしまうだろう。

先輩看護師Dのような言葉かけは、多忙な医療現場の中では、残念ながらしばしば聞かれる。看護学生が臨地実習で最もリアリティ・ショックを受けたといったエピソードがある。その光景は、看護学生がイメージした看護師の姿と大きくかけ離れており、理想と現実のギャップを知った瞬間であった。

人間関係を近づけるには?

何気ない一言や一瞬のできごとが相手に勇気を与えたりする。人と人の関係を近づける言葉には、「はじめまして」「ありがとう」「頑張って」「おめでとう」」「ごめんなさい」「大丈夫」などがある。

新人看護師は、小さなことではあるが、先輩の役に立てたと思った時、先輩から「ありがとう」と言ってもらい、ようやく仲間に入れた気がしたと語っていた。

また、新しい技術を患者に実施する前に、不安になっていた時に「大丈夫、できるから頑張って!」と声をかけてもらい、勇気が出た新人看護師もいる。相手が今、どんな状況にいるのかを理解し、タイムリーに声をかけることで、言葉はその人にとって深い意味をもつことになる。

例えば、新人看護師Eは、先輩看護師Fの「話してもらってもいい?」という一言に救われたという。

それは、新人看護師Eが看護という仕事に向いてないのではないか、と思い悩んでいた時であった。他の先輩看護師から「何かあったら言ってね」と声をかけてもらっていた。

しかし、新人看護師Eは、「何かあったら」の「何か」というのは、仕事上のことだと思っていたため、自分から悩みを聞いてもらう勇気が持てずにいた。

そんな時、先輩看護師Fがかけてくれた「話してもらってもいい?」という言葉は、「どんな話でもいいのよ」というメッセージに思え、この一言で、自分の悩みを先輩看護師Fに聴いてもらう勇気を持つことができた。

人は自分の悩みや不安を唯かに聴いてもらいたいと思う一方で、その誰かを選ぶことには慎重になる。この人なら聴いてもらえる、理解してもらえるという確信がもてなければ自分の内面を語ることは難しいからである。

また、プリセプターの看護師Gは、「成長したね」という師長から一言で、これまでの努力が報われたと思える経験をしていた。看護師Gは、プリセプターの経験は今回2度目であったが、1度目は、自分のべースで新人看護師を引っ張って指導したところ、新人看護師を追い詰める結果になったという苦い経験をしていた。

そこで、看護師Gは、今回は新人看護師のペースに合わせて、反応を確認しながら指導するよう自分なりに工夫した。しかし、本当にそれでよかったのか、自分の指導方法に自信をもてずにいた。そんな時、師長から「成長したね」という言葉をかけてもらえたことで、これで良かったんだと思うことかできた。

師長は、看護師Gの新人看護師に対するプリセブターとしての関わり方が望ましい方向に変化していることを認め、それを「成長」という一言に込めて、本人に伝えている。

まとめ

新人看護師Eと看護師Gは、ともに自分を見守ってくれる存在のありがたきを実感するとともに、状況を見極めた上でのタイムリーな一言が深く心に染み込むことを知った。

言葉を送る人と受け取る人、その一言の重みを知っているのはそれぞれ本人だけである。だからこそ、相手の心に刻まえる言葉の重みを知る必要がある。


この記事に使用している画像は、新松戸中央総合病院ブログの画像を引用させて頂いています。

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