2016.04.18 ( Mon )

看護師を辞めたい!免許取得前の看護基礎教育


新人看護師同士の研修風景

厚生労働省は、新人看護師の臨床における看護実践能力の問題は、看護基礎教育における検討課題であるとして、2002年に「看護基1教育における技術教育のあり方に関する検討会」を設置した(日本看護協会 20056)。

この検討会を設置した背景には、質が高いだけでなく効率的で、患者が安全かつ安心できる医療を提供する体制を構築するためには、人材の資質を向上させることが課題となっていたことがある。

新人看護師の臨床における看護実践能力について

その1つは、看護基礎教育における臨地実習においては、医療安全や患者の人権を尊重するという観点から、免許を取得していない学生が実施する看護技術の学習範囲が制限される傾向にあるということであった。

そこで、本検討会の報告書では、看護基礎教育の中で到達すべき教育の内容・範囲を明確にするとともに、臨地実習において学生に許容される技術とその実施条件を提示している。

さらに、厚生労働省(2003)は、医療提供体制のあり方を議論するにあたり提示した「医療提供体制の改革ビジョン」において、医療を担う人材の確保と資質の向上を図るという観点から、看護基礎教育の内容の充実を指摘した。

これを受けて、2006年「看護基礎教育の充実に関する検討委員会」が設置され、2007年に報告書が公表された(厚生労働省 2007)。本検討委員会では、看護および看護基礎教育の現状と課題、充実すべき教育内容ならびに専任教員の資質の向上、臨地実習の方法等について検討された。

看護技術の未熟

その中で、看護基礎教育の現状と課題としての看護技術に言及している。すなわち、新人看護師は、看護基礎教育で修得した看護技術と臨床現場で求められる技術の間にギャップがあるため、就職後、自信がもてないまま不安の中で業務を遂行しているということである。

その結果、新人看護師の中には、リアリティ・ショックに陥る者や、高度医療を提供する現場に適応できず早期に離職(辞める)する者がいる。また、看護学生の基本的な生活能力や常識、学力が変化してきていると同時に、コミュニケーション能力が不足している傾向があることが指摘された。

看護実践能力を強化

こうした新人看護師を取り巻く現状を踏まえ看護教育カリキュラムが改正され、2009年度より施行されている。改正カリキュラムでは看護を取り巻く環境の変化に伴い、より重要さが増していると考えられる教育内容の充実を図ることと、学生の看護実践能力を強化する」ことを意図している。

具体的な教育内容の改正点としては、専門分野をより臨床実践に近いかたちで学習し、知識・技術を統合させることを目的とした「統合分野」が新たに設けられた。

この分野の教育内容は、

「看護師としてのメンバーシップ・リーダーシップの理解」

「看護をマネジメントできる基礎的能力を養う」

「医療安全の基礎的知識」

に関するものであった。

また、「看護の統合と実践」の実習では、これらを実践するために「実務に即した実習」「複数の患者を受け持つ実習」「一勤務帯を通した実習」「夜間の実習」を行うことが望ましいとされている。

看護実践能力の低下が看護師が辞める原因

このように、改正カリキュラムでは、新人看護師が臨床現場にスムーズに適応できることを目指した内容となっている一方、看護系大学を所轄する文部科学省においても新人看護師の看護実践能力の低下は検討課題となっていた。

そもそも、わが国の学士課程による看護基礎教育は1952年に開始されたが、その後、大学教育は遅々として進まなかった。しかし、1992年「看護婦等の人材確保の促進に関する法律」の施行と同法に基づいて策定された「看護婦等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針」(平成4年12月25日文部省・厚生省・労働省告示第1号)を受けた施策の実行により急速に進んだのである。

指針では、高度化した医療に対応し資質の高い看護師等を確保する方策が示されている。その1つとして、看護の専門的知識や技術、豊かな人間性や的確な判断力を有する看護者を大学において養成することとしており、あわせて看護系大学の整備充実に不可欠な教員や研究者を養成するために、看護系大学院の整備の充実を求めている(日本看護協会 20056)。

2011年、看護系大学は200校に増加し、保健師助産師看護師法の一部改正(2010年4月施行)により、看護師の国家試験受験資格として、文部科学大臣の指定した学校教育法に基づく大学(短期大学を除く)において看護師になるのに必要な学科を修めて卒業した者という文言が明記された。

看護基礎教育は大学が主流

しかし、大学教育を受けたからといって、看護実践能力を身につけた質の高い看護師を輩出できるわけではない。そもそも、文部科学省は、2001年に「看護学教育の在り方に関する検討会」を立ち上げている。

本検討会は、2002年に厚生労働省が設置した「基礎教育における技術教育のあり方に関する検討会」よりも1年早く設置されている。「看護学教育の在り方に関する検討会」設置の目的は、看護系大学が社会の要請に応え得る人材を輩出できているかどうかという観点から、学士課程における看護学教育を見直し、その質的向上を目指すことにあった。

同時に、看護系大学の教育活動を社会の中に提示することによる説明責任を果たそうとする意図もあった。本検討会の発足にあたり、看護系大学の教育や大卒看護師の評価について情報収集したところ、「大学卒業時の看護実践能力が未熟である」という指摘があった。

大学卒業時の看護実践能力が未熟

その要因として、医療現場で求められる専門的能力が高度化している反面、学生が不器用である、臨地実習における体験学習が困難である等があげられた。これらのことより、在学中に修得できる看護実践能力には限界があることがわかった。

また、医療現場が新人看護師に期待している能力や各医療機関における新人教育に関する考え方が実にさまざまであること、大卒看護師の特徴や大学化の成果が示されていないとの指摘もあった(日本看護協会 20056)。

以上を踏まえ、「看護学教育の在り方に関する検討会」では、看護系大学が抱える最重要課題を「看護実践能力の充実」と捉え検討の焦点とした。

教育目標到達目標を示す

第一次検討会報告(文部科学省 2002)では、看護実践能カを育成する観点から教育目標を精通し到達目標を示し、それを達成する上で重要となる臨地実習の整備およびファカルティ・ディべロップメント(FD :Faculty Development)についてまとめられている。

公表後、この報告書にはさまざまな反響が寄せられたが、その中で内容の不足についても指摘された。すなわち、大学教育ならではの特徴を表現し、他の教育機関と異なる大卒看護師の習熟度を示すことの必要性であった。

これを受けて、第二次検討会の検討会報告(文部科学省 2004)が出された。その中で学士課程における卒業時に達成すべき能力として次のものがあがった。

  1. ヒューマンケアの基本に関する実践能力
  2. 看護の計画的な展開能力
  3. 特定の健康問題をもつ人への実践能力
  4. ケア環境とチーム体制整備能力
  5. 実践の中で研鏑する基本能力

まとめ

報告書では、学士課程で育成きれる看護実践能力について保証し、説明できる方法を早急に構築する必要があるとしている。それにより臨床現場では、新人看護師配置を検討する際、学士課程の卒業時における実践能力を見越した配属をすることが容易になるであろうという見解を示している。

しかし、毎年、次々と設置きれる看護系大学においては、こうした能力を身につけた看護学生を輩出しているとは言い難いのが現状であろう。だからこそ、国の指導ではなく現場環境に合わなく辞めていく看護師が後を絶たない。

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