2016.04.24 ( Sun )

看護師長がキーパーソンになり看護師離職、不安ストレス対策を


看護職のキーパーソンになり看護師長

働く人を取り巻く厳しい現状は、看護職だけの問題ではありません。1998年に自殺者が3万人を超えて以来社会問題化したメンタルヘルス不全者の急増に対して、国レベルの体系的な取り組みがなされています。

一般の企業においては、2000年8月より「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」(通称:メンタルヘルス指針)を策定し、4つのケア推進を呼びかけています。

その中でも「ラインによるケア」がこの指針において明確に示されたことは重要な意味をもっているといわれています。

では、医療現場では少し聞きなれない「ライン」という立場にある師長等のマネジャーに求められているケアの具体的な内容とは、 どのようなものなのでしょうか。

 気づき、つなげる

ラインによるケアにおいては

  1. 職場環境の問題点の把握と改善
  2. 「いつもと違う」部下の把握と対応
  3. 部下からの相談への対応
  4. メンタルヘルス不全者の部下の職場復帰への支援

の4点が重要となります。

仕事の質、量ともに負荷が増す現状において、看護職場の環境とスタッフの様子をいちばん身近に感じることができるライン、すなわち看護師長に対して大きな期待が感じられる内容です。

一次予防

職場環境に潜むストレス要因を把握し、それらの問題点に対しては、 自らの権限の範囲内で対応し、メンタルヘルス不全者を生み出さない看護職場づくりの実践。

二次予防

「いつもと違う」部下(看護師)の把握と対応および部下からの相談への対応によるメンタルヘルス不全者(およびその予備軍)の早期発見。

三次予防

メンタルヘルス不全者の円滑な看護職場復帰および再発防止のための支援。

という、一~三次予防のあらゆる局面において、マネジャー(看護師長)は気づき、組織内のシステムにつなげるキーパーソンといえるでしょう。

いつもと違い表情の看護師

いつもと違う部下(看護師)の様子

 

表1

  • 遅刻、早退、欠勤が増える
  • 休みの連絡がない(無断欠勤がある)
  • 残業、休日出勤が不釣合いに増える
  • 仕事の能率が悪くなる。思考力・判断力が低下する
  • 業務の結果がなかなかでてこない
  • 報告や相談、職場での会話がなくなる(またはその逆)
  • 表情に活気がなく、動作にも元気がない(またはその逆)
  • 不自然な言動が目立つ
  • ミスや事故が目立つ
  • 衣服が乱れたり、不潔であったりする

※「いくつ以上当てはまれば注意」といった基準ではなく、看護師長自身の気づきを助ける目安であること。

看護師の行動をいち早く気づくこと

いつもと違うスタッフヘの“気づき”と“声がけ”ラインによるケアにおいて、特に大切なのはマネジヤーとしての看護師長が「いつもと違う」看護師に、できるだけ早く気づくことです。

「いつもと違う」様子に気づくのは、日頃から看護師一人ひとりの業務内容、仕事のこなし方、同僚、上司とのコミュニケーションのとり方などの詳細を把握しているマネジャーとしての看護師長だからこそできるケアといえます。

表1に「いつもと違う」部下(看護師)の様子に気づく視点を示しています。ただし、注意してほしいのは、この表は「いつもと違う」看護師を選出する基準(いくつ以上当てはまれば要注意、などというような)を示したものではなく、あくまでも師長自身の気づきを助けるツールの一つであり、そこから部下としての看護師とのコミュニケーションが始まることにより、辞めたい、不安を緩和することを前提としているものであるということです。

「いつもと違うけどどうしたの?」と声がけして話してみて、早い段階でじっくりと話を聴く時間をとるべきなのか(その後必要に応じて専門医受診を勧める等).早急に勤務変更するべきなのか、しばらく様子をみて大文夫なのかといった判断ができるのです。

具体的に現場看護職に当てはめると

  1. いつもは、業務開始の30分前には必ず出勤して、情報収集していた看護師が遅刻ぎりぎりで駆け込む。
  2. 提出物が遅れたことがない主任が、師長から声がけしてやっと出すことが続く。
  3. 月に一度は小旅行等の計画を立て、同僚に気兼ねしながらも勤務希望を出していた元気印の看護師の休み希望がぶつりと切れたようになくなり、表情も暗い。

自分を気にかけてくれると看護師は元気を取り戻す

いずれも、ちょっと気になる「いつもと違う、不安を感じる、辞めたいのか?」などの様子です。このくらいなら師長が、「いつもと違うけどどうしたの?」と声がけすると、「それがね、師長さん……」と立ち話程度で終わることも多いでしょう。

声がけによって、師長が自分を気にかけてくれていたとスタッフ自身が気づくだけで元気を取り戻してくれる場合もあるでしょう。しかし、多忙な師長としてのマネジャーは、「このくらいなら、大袈裟にしなくても様子をみてみようか」と思うことが多いのではないでしょうか’。

「後で!」は大きなマイナス要因になる

一般企業の管理職研修の場合には、このような「いつもと違う」部下の事例をロールプレイやモデリングで設定すると思いますが、参加者の管理職にいつもとっている対応を質問してみると圧倒的に多いのが、「(声がけしないで)しばらく様子をみてみる」という返答なのです。

それどころか、「ちょっと相談したいことがある」と部下に言われても、「今は忙しいから後で」とか「できれば避けたい」と思いながら対応していることさえ少なくないのが現実のようですから看護師の職場にたいする不安や、看護師を辞めたいと思うことも増幅させます。

「忙しいからこそこのタイミングを逃すと後でよけいに時間をとられる」とか、「忙しいからこそ早めの対応が重要だ」と、いくら説明してもどうにもならない悪循環に陥っている様子が感じられます。

ストレスマネジメントからリスクマネジメント、TQMヘ

「メンタル(ヘルス)はもういいです。これ以上仕事を増やさないでください」。

これは、ある管理職研修に参加された方の言葉ですが、マネジャーの置かれている現状を象徴しているのかもしれません。最近は、「今のマネジャーは、プレイングマネジャーとして自分の仕事をこなすのに精一杯で、 とても部下をみる余裕はなくなってしまった。

師長も例外ではない

マネジャー自身がいつ過労で倒れてもおかしくない状況……」という報告さえよく耳にします。医療現場における師長も例外ではないでしょう。

メンタルヘルスというと、 どうしても「うつ病」に代表される「こころの病気」や「こころの問題」を抱えた部下への対応をイメージしがちです。しかし、本来の目的はその予防にあるのではないでしょうか。

患者さんに対しては、「早期発見が大切」「予防に勝る治療はない」と言っている医療従事者自身が、 自分のこととなると、犠牲の精神でないがしろにする傾向はないでしょうか。

師長が部下の様子に気を配る目的は?

毎日の業務の中で、師長が部下の様子に気を配る目的は、メンタルヘルス問題への対応だけではないはずです。

職場でのコミュニケーションが良好で、安心して仕事に取り組める環境を整えることができれば、医療事故のリスクも減り、効率的で質の高い医療サービスの提供につながり、結果的には看護師の不安、ストレス、看護職から辞めたいという気持ちをおさせられることになります。

不安が緩和して元気に看護職に励む看護師

まとめ

ラインによるケアが機能すれば、看護師のストレスマネジメントのみならず、組織としてのリスクマネジメント、TQM(Total Quahty Management)にもつながる、 と。

そんな視点をもつことこそ、師長自身がキーパーソンとなリラインによるケアに取り組む意味ともいえるのではないでしょうか。

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